若者たちの音楽好きを牽引したFM情報誌『FM STATION(FMステーション)』の誕生から休刊までの経緯、そして現在

『FMステーション』はFM情報誌としては最後発の存在だった

1981年7月創刊のFM情報誌で隔週発行。創刊時の定価は200円で発行はダイヤモンド社。その後、版元がシティ出版(現在のカー・アンド・ドライバー社)に移管されています。雑誌『FMステーション』創刊当時は、『FM fan(共同通信、創刊1966年)、『週刊FM』(音楽之友社、創刊1971)、『FMレコパル』(小学館、創刊1974年)が既発誌としてあったため、最後発のFM情報誌でした。

創刊号の価格は200円。表紙デザインは『カー・アンド・ドライバー』同様、イラストで飾っている。

「クルマと音楽」を意識しつつ、主たる読者像は中高生

1978年に創刊した自動車雑誌『カー・アンド・ドライバー』が軌道に乗り、次は何を作ろうかという議論になった際、当初はオーディオ雑誌なども検討されたものの、発行部数が少なくなることもあり、「音楽×FM」に注目したという経緯があります。自動車雑誌を発行していることから、「クルマと音楽」は当初から意識されていました。試行錯誤を続けながら、ターゲット読者像は中学生と高校生となっていきました。

『FMステーション』の提供価値

当時はまだCDが一般的ではなく、80年代はじめでは「CDをオンエアするプログラム」ということがFM放送の価値になってもいました。また、「貸しレコード」というサービスもありましたが、傷をつけると補償しなければならず、傷もつきやすいことから、中高生にはなかなか利用するハードルは高かったという背景があります。

そんな中で、ラジカセや安価なコンポが普及しはじめ、一般的な記録媒体だったカセットテープにFM放送を録音する”エアチェック”がブームとなり、その録音したカセットテープのケースにカッコイイレーベルを仕込んだり、カセット本体に貼るインデックスシールを作りたいというニーズに応えていくことになります。

(お小遣いが少ない)中高生に、FM放送を通じて”エアチェック”するという活動を広め、録音したテープを”ドレスアップ”するために、鈴木英人氏のイラストや、カセットレーベル用の写真を提供していくことが評価されていきました。

1998年に休刊となった経緯

一言でいえば、「時代の変化に合わせて、一定の役割を終えた」ということになります。時代の流れとしては、90年代にもなるとCDが一気に普及していき、FM番組を録音する必要性が薄れていきました。さらにカセットテープに変わるメディアとして、DATやMDなどCDから直接高音質で録音可能なメディアも増えていきました。

何より、FM放送のプログラムが「よりよい音楽を丁寧にオンエアする」メディアから、「トークが多く、音楽の録音に向かない」メディアへの変化していったこともありました。

他にも、FM放送の多局化で番組表制作の負担が高まっていた一方、J-WAVEのように番組表を事前に公開しない局も現れた、という制作上の理由もありましたが、いずれにせよ時代の変化に伴って、その役割を終える形で、番組表を主体としたFM雑誌『FMステーション』は休刊するはこびとなりました。

2022年、シティ/ポップのコンピレーションアルバム発売とともにその名が復活

それからというもの、世の中からは『FMステーション』の存在は完全に影をひそめてしまっていたのですが、2022年7月にリリースしたコンピレーションアルバム『FM STATION 8090 ~CITYPOP & J-POP~ by Kamasami Kong』をきっかけに、その活動を再開するかたちとなりました。翌年同月に2枚のコンピレーションアルバム『FM STATION 8090』を同時発売するとともに、Webメディア『FMステーションonline』として活動を再開しました。