ラジカセとエアチェック、FM雑誌が欠かせなかったあの頃【FMステーションのあった時代】

FM情報誌『FM STATION(FMステーション)』が登場したのは、1981年。時代はバブル前、世の中がイケイケで景気がいい時期。最後発となる4番目のFM雑誌として創刊された。街には華やかな歌が数多く鳴り響き、音楽が若者の生活のBGMとして欠かせない時代だった。

FMステーション1988年4/18→5/1号

1980年代を代表するFM情報誌『FM STATION』がなぜ支持されたのか

主な読者ターゲットは音楽に目覚め始めたばかりの中学高校生。誌面は各FM局の番組表、注目の番組紹介、人気アーチストのインタビューやコンサートレビュー、さらに新譜、オーディオ新製品の紹介など中学高校生が、音楽を楽しむための情報が満載されていた。ここで得た情報を自慢げに仲間内で話していたという方も多いのでは。

FMステーションが、他のFM雑誌と比べ当時の中学高校生をひきつけた大きなポイントといえば、なんといっても群を抜いたオシャレさだ。その要素のひとつが毎号の表紙を飾る人気イラストレター鈴木英人さんのイラスト。鮮やかな色使い、憧れのアメリカの風景、明るい日差しを感じさせるタッチで、華やかな80年代の空気感にぴったりだった。表紙が見えるように持ちオシャレアイテムのひとつとして、FMステーションを持ち歩く若者もいたほどだ。

 アイドル情報も充実だった。FM専門誌がクラシックやジャズ、ロックを中心に扱っていた時代にあって、アイドルを扱う専門誌は“ミーハー”と指摘されることもあった。だが、当時のアイドル曲は、シティポップアーチストが手掛け、そのクオリティが格段にアップしていた。

エアチェック文化を加速させた「カセットレーベル」

 オシャレとともに、読者を魅了したのが、エアチェック、オリジナルカセットテープ作りをより楽しくしてくれたことだ。

 当時、中学高校生が音楽を楽しむときのアイテムといえば、カセットテープ。少ないお小遣いでは、レコードを買うのも大変。ましては発売されたばかりのCDなんて高くて手が出ない。多くの中学高校生は、カセットテープを買い、音質がいいFM放送をエアチェックし、オンエア曲を録音して楽しんだのだ。ちなみに当時カセットテープには普及品のノーマル、少し音質が高いハイポジ、最高レベルのメタルとそろっていた。メタルは他の比べとても高価なため、重ね録りをせず大切な曲を保存する際に使った。

 カセットテープをラジカセにセットし、チューナーの周波数を合わせ、タイミングを計って録音ボタンを押す。その行為にドキドキした。FMステーション誌内の番組表には、アーチスト名、曲名、分数などオンエア曲の情報が詳細に掲載されていた。46分、60分、90分などカセットに収録できる時間に合わせて録音するには、この情報が必需だったのだ。時間を計算し、番組表内の曲に蛍光マーカーで線を引き、同じ番組内でも録音する曲としない曲を何度も試行錯誤しながら選んだものだった。それもまた楽しかった。

1984年9月18日の関東地区の番組表。当時関東エリアで聴取できるFM局はNHK-FM とFM東京だけだった