昭和歌謡の次は平成J-POPブーム到来か。「歌って、盛り上がれる」音楽が脚光を浴びる!

小室ファミリーやORANGE RANGEの曲がSNSで大バズリ中

TM NETWORK

 昭和歌謡ブームが一段落した今、新たな音楽トレンドとして平成J-POPへの注目が高まっている。背景には、小室哲哉がプロデュースしたアーティスト、いわゆる「小室ファミリー」の楽曲が2021年に相次いでサブスクリプション解禁されたことがある。その結果、trfの『EZ DO DANCE』(1993年)やglobeの『DEPARTURES』(1996年)といったヒット曲がSNS上で再び話題を呼び、若い世代を中心に注目が集まっているのだ。

 この流れは小室ファミリーにとどまらない。ORANGE RANGEの『おしゃれ番長 feat.ソイソース』(2008年)がTikTok上で“踊ってみた”動画で大ブレイクし、再生回数は3億回を超える勢いを見せている。また、カラオケ業界でも“平成熱”は加速しており、DAMやJOYSOUNDといった主要サービスでは“平成ソング”のプレイリストや特集イベントが展開され、各地で盛況を見せている。

 この夏に開催された“日本最大級のJ-POP DJフェス”『東京歌謡曲ナイト』に、FMステーション編集部も足を運んだ。会場では多くの平成J-POPの楽曲が流れ、観客の熱気は最高潮に達していた。同イベントを主催するJ-POP DJの第一人者、ゆけむりDJsによれば、「平成の楽曲、とくに小室ファミリーの曲はつねに人気で、年々その盛り上がりが増している」という。会場にいた若いカップルは、「最近の曲より、平成の曲はサビがよくて、歌えるし、ノレる」と語っており、世代を超えた共感が広がっている様子がうかがえる。

暗いニュースが続く現在、音楽で明るく陽気な時間を

ORANGE RANGE

 1990年代以降、歌謡曲を含めた日本のポップスは「J-POP」として定義され、歌番組やドラマ主題歌、そしてカラオケを通じて国民的な娯楽として定着した。CDの売り上げがピークを迎えたこの時代の楽曲は、キャッチーで明るく、誰もが歌える共有性の高いものであった。とくに「みんなで歌って、盛り上がれる」音楽は、時代を超えて受け入れられやすい。

 現代は、戦争や政情不安、物価高騰など、日常に重苦しいニュースが絶えない。そうした中で、「せめて音楽の中だけでも明るく陽気な時間をすごしたい」と願う人が増えており、平成J-POPの再評価はこのニーズにぴたりと合致している。

 現在とくに注目を集めている楽曲が、1990年代に社会現象となった小室ファミリーの作品だ。彼らの音楽が再び人々の心をつかむ理由について、ゆけむりDJsは次のように分析する。

ゆけむりDJs

「小室さんは、“多くの人に歌ってもらい、聴いてもらう”ことを徹底的に研究し楽曲を作っていたと思います。日本人が心地よいと感じるメロディやリズムが巧みに取り入れられてますね」。この点が、いまなお人気を集めている理由だ。そして「プロデューサーとしてさまざまなアーティストに楽曲を提供しており、声や雰囲気の違いを活かした作品が多い」点も小室哲哉の特徴だという。バラエティ豊かな点がファンの拡大につながる。そして「“WOW WOW Yeah Yeah”の多用。このフレーズは小室さんのいろんな曲に入っているのですが、歌うにしろ踊るにしろ、鉄板で盛り上がります」。覚えやすく、歌うのがやさしいフレーズ。多くの人が「アッ、あれね」と思い出すに違いない。加えて「ダンスミュージックなので、ノッて歌える」「メロディがドラマチックで気持ちを高揚させる」点も受ける特徴だとゆけむりDJsは語ってくれた。

小室ファミリー全盛から30年、平成J-POPはさらなる盛り上がりへ

 2025年末から2026年にかけて、小室ファミリーを中心とする平成J-POPの代表曲が続々と30周年を迎える。たとえばglobeは1995年9月に「Joy to the love (globe)」でオリコン1位を獲得し、その後も立て続けに1位を獲得。安室奈美恵は1996年にリリースした「Don’t wanna cry」など、すべての楽曲がミリオンセラーを記録。彼女のファッションや生き方をトレースする「アムラー現象」は、まさに時代を彩った。

 同時期には、trf、H Jungle with t、hitomi、華原朋美といったアーティストも次々とヒットを飛ばし、小室ファミリーは1990年代の音楽業界を席巻した。こうした過去のカルチャーが再び脚光を浴びる背景には、「約30年周期で再評価が起こる」という文化的なサイクルがある。当時青春時代を過ごした世代が中高年となり、懐かしさから再びその音楽に触れるようになると同時に、若い世代にとっては新鮮な音として響き、新たな楽しみ方が生まれる。今秋デビューして話題のホンダ・プレリュードは、2001年以来の復活である。先述の“再評価のサイクル”とほぼ合致する。20代で憧れたクルマに50代になって改めて触れる喜び。いま50代の生活を謳歌している人々にとって1990年代の楽曲は青春時代の音楽そのものだということがわかる。

 平成J-POPブームは、過去の懐古にとどまらず、現代のニーズや感性と見事にマッチしながら、次なる盛り上がりのフェーズへと移行している。これからの音楽シーンにおいて、平成J-POPはさらに存在感を増していくだろう。

作品情報

アーティスト:TM NETWORK
タイトル:BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙(そら)を越えて) -2025 Version-
配信リリース中
配信サイト:https://tmn.lnk.to/BEYONDTHETIME_2025

アーティスト:ORANGE RANGE
タイトル:裸足のチェッコリー
配信リリース中
配信サイト:https://orangerange.lnk.to/Hadashinoceccoli