1980年代における代表的なイラストレーターたち【FMステーションのあった時代】
さまざまなイラストレーターが大活躍した80年代
1980年代はイラスト文化が拡大した時代。”ヘタウマ”といわれた渡辺和博氏、湯村輝彦氏から、リゾートやシティライフを描いた鈴木英人氏、永井博氏、わたせせいぞう氏、漫画からスタートしてイラスト作品でも人気を誇った江口寿氏、スパーリアリズムの空山基氏、岡本博氏などなどさまざまなタイプのイラストレーターが各種メディアで活躍し、話題となっていた。
そのためイラストが若者向け雑誌の表紙を飾ることが多かった。読者からの注目度も高く、雑誌の売り上げに大きく貢献したといわれている。情報誌『ぴあ』は毎号、青年誌『POPEYE(ポパイ)』や『Hot-Dog PRESS(ホットドッグプレス)』、サブカルチャーを発信した『ビックリハウス』は頻繁にといった感じだった。
『FM STATION』といえばイラストの表紙、というイメージを持たれていて、雑誌『FM STATION』のイラストというと鈴木英人氏が真っ先に想起されるだろう。実際、創刊号でのシーナ・イーストンの似顔絵からはじまり、その多くを鈴木英人氏のイラストが表紙を飾っていたが、他にも雑誌『FM STATION』の表紙や誌面では、著名なイラストレーターが活躍していた。今回はそのうちの2名を紹介しよう。
ポップな画風&ユニークな切り口の齋藤融 氏
まずは、齋藤融(さいとうとおる)氏。1960年代からファッション誌『メンズクラブ』や青年誌『平凡パンチ』をはじめさまざまな雑誌で活躍しているイラストレーター。映画やファッション、音楽における知識が豊富で、アメリカンコミックの調のポップな画風で、多くの俳優やミュージシャンを描いたことで有名だ。
雑誌『FM STATION』 では、「アーチスト・イラスト・ピンナップ」いう連載企画を担当し、縦×横25.5×19㎝の大判イラストを描いていた。毎回、ユニークな観点でミュージシャンを切り、「クスッ」と笑える内容が好評だった。齋藤融氏はこれだけではなく、付録のカセットのインデックスカードにおいては、連載企画のタッチとは違い、やや写実的にアメリカの風景、人物を描いている。
コンピュータグラフィックで描いてみせた岡本博 氏
続いて、岡本博(おかもとひろし)氏。現在は、イラストレーターというよりも、アメリカン・ヴィンテージ・クロージングの究極再現で人気のファッションブランド「TOYS McCOY」の会長として有名。70年代後半から、雑誌でイラストレーターとして活動を始め、細かな部分まで描いたリアルイラストの旗手として『POPEYE』の表紙を飾るなど大活躍だった。
雑誌『FM STATION』では、デジタル黎明期の80年代にコンピュータグラフィックでミュージシャンを描き、新たなイラストワールドを読者に見せてくれていた。
雑誌『FM STATION』を飾ったイラスト作品集
鈴木英人氏、齋藤融氏、岡本博氏。3人ともに当時、別冊『FM STATION ILLUSTRATED(FMステーション・イラストレイテッド)』 のタイトルで作品集を出版しており、現在ではそれぞれプレミア価格がついているほど、いまなお多くの人を魅了し、高い評価を得ているのだ。
『FM STATION』 1985年8/26→9/8号より
雑誌『FM STATION』は、読者からのイラスト投稿も盛んだった。それぞれがオリジナリティあふれるタッチや構図でミュージシャンの姿を描き、読者コーナー「ズバリひと言」を賑わせていた。これは兄弟誌『CAR and DRIVER』で、当時から今もなお続く人気企画だ。
著名なイラストレーターたちが表紙と誌面を華やかにした、雑誌『FM STATION』のあった1980年代。この世界観を懐かしんで愉しんで頂く読者のみならず、その時代を知らない読者にも新鮮に感じて愉しんでいただけるよう、当Webサイト『FM STATION online』でも新進気鋭のイラストレーターの発掘を含め、「FMステーション・オンラインのある時代」としての新たな世界観の創出を行っていきたい。