ダブルカセットデッキで没頭した「マイベスト」なオリジナルカセットテープ作り【FMステーションのあった時代】

 80年代に一斉を風靡した”エアチェック”に日々勤しみ、お気に入りの楽曲が手元に集まったら、自分だけのオリジナルテープを編集する作業が待っていた。ここで活躍したのがダブルカセットデッキだ。

ダブルカセットデッキで作り続けたオリジナル・コレクション

 片方に音源となるカセットをセットし、もう片方にセットしたテープに好きな曲目を、好みの順番で録音(ダビング)していくのである。FM誌の番組表は音源の演奏時間を紹介しているから、この情報をもとに「90分テープに収録するための緻密な計算」を行う。片面45分を無駄なく使うための大切な作業だ。

 ダビングを続けて、A面とB面が好みの音楽でいっぱいになったら、カセットを収納するカセットケースのドレスアップだ。カセットケースの背はインデックスシールを切り貼りしたり、または『FM STATION』についていたアーティスト名のインデックスをそのまま使用したりし、そのカセットのタイトルをつける。部屋にはこのインデックスが見えるように収納していくので、いかにきれいに、かつ見やすくするのが重要だった。

『FM STATION』1984年9/10→9/23号より。縦書き、横書き、英語表記の3パターンで書かれていた

 次はケース側面のドレスアップ。市販のカセットテープは、この部分には曲名を書けるスペースがとってあったが、曲名が書いてあるだけじゃ物足りない。そこでも『FM STATION』は大きな助けとなった。硬紙でついていたレーベルだ。表紙を飾った鈴木英人さんのイラストはもちろん、齋藤融さんの細かに書き込まれたイラスト、さらに海外の美しい風景などのものもあった。硬紙ではないが、目次横に掲載されていた岡本博さんのミュージシャンイラストもうれしかった。ちなみに誌面に掲載されている写真の多くはカセットケースにすっぽり収まるサイズになっていて、雑誌を切り抜くのは気が引けたがこれも利用できた。

『FM STATION』1985年8/12→8/25号より。誌面に出ていたミュージシャンの写真。切り取るとき、裏面の記事がお気に入りでないように願ったものだった。

 そう、雑誌『FM STATION』には、オリジナルカセットテープを彩るための工夫が多数行われていたのだ。

”エモい”カルチャーとなったカセットテープで音楽を楽しむ姿

「カセットテープでアナログの音楽を聞いていたのは、80年代に高校時代を過ごしたボクたちの自慢です。デジタルが中心になったいまとなっては、誇らしいことだと思います。『FM STATION 8090』にカセット仕様をラインアップしているのは、カセットで音楽を聴いた世代に対するメッセージですし、カセットを使った経験がない若い世代にとってはエモいアイテムになっています」とDJ BLUEさんは語る。

 今回発売される『FM STATION 8090』の新作2タイトルにもカセット仕様は用意されているし、代替用カセットレーベル(インデックスカード)が3枚付属している。これこそ、カセットテープで音楽を聴くということ、オリジナルカセットを作ってオリジナルレーベルを作る1980年代、90年代の音楽の楽しみ方の再提案である。

FM STATION 8090
~GOOD OLD RADIO DAYS~ DAYTIME CITYPOP by Kamasami Kong
カセット版・レーベル3枚付き(写真はサンプルです)
FM STATION 8090
~GENIUS CLUB~ NIGHTTIME CITYPOP by Katsuya Kobayashi
カセット版・レーベル3枚付き(写真はサンプルです)

 2023年版の『FM STATION 8090』シリーズは、DJ BLUEさんが憧れたCITYPOP、J-POPで構成された架空のFM番組がコンセプト。DJはカマサミ・コングと小林克也。プロが選んだ楽曲を、日米DJのビッグネームがDJとして進行していく音楽番組であり、見方によっては、プロが作ったオリジナルテープの見本作ともいえる。

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