令和の若者たちの心をつかむ昭和ミュージック!デビュー40&45周年アーティストたちの企画作

TUBEや鈴木雅之、米米CLUB、南野陽子、斉藤由貴らがアニバーサリー企画を展開  

TUBE

 2025年、日本の音楽トレンドは “昭和”へと回帰している。中でも1980年代に生まれた名曲が人気だ。リリース当時に聴いていて当時を懐かしむ中高年はもちろん、「TikTokで聞いたことがある」「親のカラオケで知った」など令和の若者たちの心もつかんでいる。人気を表す具体例を紹介すると、ラッツ&スターの『め組のひと』(1983年)は、TikTokにおいて「めっ!」の決めポーズが大流行。コミカルな振り付けとリズミカルなビートが「踊ってみた」動画とマッチし、今や定番BGMとなっている。

 松田聖子の『青い珊瑚礁』(1980年)は、K-POPグループNewJeansのハニによるカバーを契機に、YouTubeやInstagramでカバーが拡散。韓国と日本の両国で80年代音楽ブームの一翼を担う存在となった。 

 チェッカーズの『ギザギザハートの子守唄』(1983年)も再注目されている。思春期の葛藤を熱く歌い上げた直球の歌詞が、「ストレートでかっこいい」と若者に支持されており、「昭和男子になりきって歌ってみた」企画がTikTokで人気を集めている。   

 大滝詠一の『君は天然色』(1981年)は、AppleのiPhone/iPadのCMで使用されたことをきっかけに再評価。夏の思い出をテーマにしたレトロ風動画のBGMとして、SNS投稿に多用されている。

 なぜ、80年代の音楽が人気となっているのか。ネット上で指摘されているのは、 「サビの部分が強い」「メロディにメリハリがありわかりやすい」「歌詞がかっこよく、エモい」「レトロな雰囲気がいい」「決まった振り付けがある」といったポイントだ。これらが、いまの若者たちの心に響く要素といえるのかもしれない。

 こういった状況の中、80年代のヒット曲の再リリースが積極的に行われ、特に2025年は、1980年代に活躍した数多くのアーティストがデビュー40周年、または45周年を迎え、周年を記念したベスト盤リリースや周年イベントを開催している。

   “夏の風物詩”といわれるほど、夏のイメージが定着しているTUBEは1985年のデビューから40周年を迎え、初の全シングル収録ベスト盤『All Singles TUBEst -Blue-』『-White-』をリリース。ジャケットには、80年代カルチャーの象徴的存在のイラストレーター・わたせせいぞうを起用した。また、YouTubeではノスタルジックな記念映像も公開している。さらに、かつて「冬の女王」と呼ばれた広瀬香美とのコラボ曲「ロマンス・イン・ザ・サン」も6月25日にリリースされた。 

 派手なパフォーマンスで一世を風靡した米米CLUBもデビュー40周年。9月26日からヒット曲満載となる記念の全国ツアーを行う。 

鈴木雅之

 ブラックミュージックに対する深い愛情と表現力豊かな歌唱が高く評価される鈴木雅之はシャネルズでデビューしてから45周年。2枚組の記念ベストアルバム『All Time Doo Wop !!』をリリース。また、佐藤善雄、桑野信義と再録音した『め組のひと』などの4曲のライブバージョンをYouTubeで公開している。

   このほか、佐野元春、EPO、渡辺美里なども節目を迎え、各種記念リリースや企画を展開している。

 

中山美穂

 デビュー40周年を迎えたアイドルも少なくない。南野陽子、斉藤由貴、そして昨年末にこの世を去った中山美穂らもそうだ。アイドルだけあって音源をまとめた作品に加えて、たとえば当時の人気歌番組『ザ・ベストテン』出演時の映像をまとめたものなど、記念の映像作品も数多くリリースされている。   

 こうしたアニバーサリー企画があることで、80年代に青春を送った「FMステーション世代」にとっては、懐かしの音楽に再び触れることができ、若い世代にとっては新しい音楽に出会えるうれしい機会となっている。 

アニバーサリー企画の情報は 自ら取りにいかない限り入手できない   

 しかしこういった情報は意外にも「知っている人が少ない」のが実情だ。筆者は今年で61歳の「FMステーション世代」なのだが、同年代の友人に周年企画がいろいろ行われていることを伝えても、実は知られていないことが多い。   

 理由は明快である。かつてはテレビや雑誌を通じて自然に音楽アーティストの情報が数多く入ってきたが、現在はSNSや動画配信サービスなど、情報の流通経路が細分化している。そのため、自ら積極的に情報を取りにいかない限り、注目の話題であっても知る機会が得られにくくなっているのだ。   

 2026年は、久保田利伸、徳永英明、ZARD、松山千春、松本伊代、薬師丸ひろ子らが40&45周年を迎える。ぜひ積極的に情報にふれ、懐かしさと新しさが共存するこの80年代そして90年代音楽のブームを、自らの耳と心で確かめてみてはいかがだろうか。  

 カセットテープが車内で再生できれば、現在の20代リスナーにも昭和のドライブミュージックをスタイルを楽しんでもらうことが可能なのだが、さすがにこれは難しいかもね。

作品情報

タイトル:TUBEベストアルバム『All Singles TUBEst -Blue-』

タイトル:TUBEベストアルバム『All Singles TUBEst -White-』
リリース中
仕様・価格:共に通常盤(3CD)4400円/初回生産限定盤(3CD)8900円

タイトル:鈴木雅之 ベストアルバム 『All Time Doo Wop !!』
リリース中
仕様・価格:通常盤(3CD)5500円/生産限定盤(3CD)7700円

タイトル:中山美穂 映像集『~Miho Nakayama 40th Anniversary~ 中山美穂「ザ・ベストテン」永久保存版』
リリース中
仕様・価格:5枚組ブルーレイボックス28600 円